コラム

里山という幻想

2017年5月20日   『東京へゆくな』という谷川雁の詩がある。「東京へゆくな」のフレーズの次は、なんだったか思い出せないので、調べてみたら「ふるさとを創れ」だった。まるで政府の「地方創生」を応援するようなフ・・・

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あんみつと大仏

2017年4月20日   湯島へ行った帰り、道を探しながら歩いているうちに、そうだ、あそこへ寄ってみようと思い立った。若いとき、夏休みにアルバイトをしていた店で、今も営業していると知って、機会があったらいつか訪・・・

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一生を棒に振る

2017年3月20日   ホトトギス社に勤めているという女の人から前に名刺をもらったことがあったなと思って、名刺の束をひとしきり探してみたが、出てこなかった。ホトトギスといえば、正岡子規、高濱虚子から今に続く俳・・・

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それを猟師が鉄砲でうってさ

2017年2月20日   最近本で読んで、人に話さずにいられない面白い話がある。栃木県足利郡吾妻村の龍光院というお寺に、古くから貨狄(カテキ)様と名付けられた木像があって信仰を集めていたそうだ。もともとは村の清・・・

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仮面の酷薄

2017年1月20日   イスラム圏では、女性たちが顔を隠していたベールを外しつつあるというのに、日本ではマスクをして顔を隠す女性が増えているのはどうしたことだろう。ある日、電車に乗って、向かいの席の乗客を見た・・・

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下駄屋の主人

2016年12月20日   一枚の絵に強く引き付けられた。重松鶴之助という作者の「閑々亭肖像」という絵である。黄色の着物を着て藍色の帯を締めた、どうということのない和服姿の中年男を斜め前から描いている。小林秀雄・・・

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トランプとピケティの関係

2016年11月20日   武力や富による支配には命がけで抵抗する世界の人たちが、知による支配にはなぜ反発しないのか常々不思議に思ってきた。その理由としては、まずほとんどの人が子どものうちから学校で知による選別・・・

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思い出の歌声喫茶

2016年10月20日   矢切の渡しのこちら岸は葛飾柴又だが、向こう岸は千葉の松戸だということを初めて知った。松戸に講演で行った折、夜の懇親会の席でのこと。古い世代で『矢切の渡し』といえば、大ヒットした歌謡曲・・・

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センチメンタル・ジャーニー

2016年9月20日   確かこの倉庫が立っているあたりに、あのころは土俵があった。田舎に帰ったついでに、昔住んでいたあたりにみんなで行ってみようということになり、車を飛ばして来てみたのだ。今は市町村合併で地名・・・

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大いなる謎

2016年8月20日   自然界に雄と雌があるのはなぜか。ほんとうのところは理由がよくわかっていないと知って驚いた。雄と雌があるのは、ほとんど当然のこととして疑問に思うことがなかったからである。しかし、自然界に・・・

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誰よりも世俗的な日本人

2016年7月20日   価値観とは、人が何に価値を認めるかということだが、世界の人々を対象に行われる「世界価値観調査」というのがある。2005年に行われたアンケート調査の結果を見ると今更ながら驚く。 調査では・・・

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トイレの話

2016年6月20日   このところぐずついた天気のわりに、なかなかどーんという雨が降らず、東京の水がめが干上がりつつあると聞くと、責任者でもないのに、いささか心配になる。昔、沖縄の那覇にいたころ、一度だけ水不・・・

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水に落ちた犬

2016年5月20日   現代は異常な時代である。といっても、そんなことはもうみんな知っているよといわれそうだが。私が思う現代の異常は、私たちの周りにあふれ返るおびただしい数の写真や画像である。人類の歴史に初め・・・

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過去こそが大事

2016年4月20日   湯布院の森号に乗って友人たちと湯布院に向かう途中、日田を通る。日田にはむかしタモリがいてボウリング場の支配人をしていたんだという話をする。タモリは、それまで博多で生命保険の勧誘の仕事を・・・

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身の上相談

2016年3月20日   この世で一番恐ろしいものは何か。大地震? 津波?いやいや、大地震や津波よりも恐ろしく、人の営みを根こそぎ奪い尽くしていくもの。それは時代の変化である。 岩波文庫で出ている森鴎外の『渋江・・・

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家族にいったい何があるのだろう

2016年2月20日   カンボジアの首都プノンペンに去年行ったときには、日本のうどん屋は一軒しかなかったが、今年は大手の丸亀製麺をはじめ十軒近くに増えていて、さながらうどん戦争の様相を呈していた。 そのカンボ・・・

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ヒビの効用

2016年1月20日   子どもの頃、大鵬と握手をしたり、王や長嶋と一緒に写っている写真を持っている子がいたら、もうそれだけで、羨望を通り越して、一目も二目も置かれる存在だったろうと思う。私の周りにはそんな子は・・・

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久くん、待ちにし

2015 年12月20日   クリスマスが近づいて、クリスマスソングが聞こえてくる頃になると、前にも話したことがあるかもしれないけど、と断りつつ、いつも誰かに切り出す話がある。 あれは、中学に進んで初めてのクリ・・・

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戦争と人間

2015 年11月20日   日本で戦争に反対する人が多いのは、その方が一般にウケがいいからである。空気が一変して、ウケるどころか非国民呼ばわりされるような社会になれば、きっと戦争に反対する人はほとんどいなくな・・・

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いいこと思いついた

2015 年10月20日   役所などに行くと机の上に積み上げられた書類の高さに驚かされることがあるが、今までで一番ドギモを抜かれたのは、作家の大城立裕氏を職場に訪ねたときだ。記憶をたどってみると、今から36年・・・

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結婚の条件

2015 年9月20日   嫁を探しているがどこかにいい人がいないだろうかと聞かれたので、よしておけばよかったのだが、酒が入っていたせいもあって、「日本中どこを探しても、もういい人なんかいるわけがない、結婚は今・・・

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ビルマの事々

2015 年8月20日   7月の終わりに5日間の予定でミャンマーの古都ピーに出張した帰り。ピーからヤンゴンへと続く道路の両側は前日から降り続いた激しい雨のせいで川のようになっていた。そこに軒を連ねている商店や・・・

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日本軍の戦法

2015 年7月20日   自分がもし大正時代に生まれて、徴兵され、招集されて旧日本軍の兵士となり、南方の戦地に送られていたらどうなっていただろうと想像するのは苦しい。結末がわかっているからである。 当時の兵隊・・・

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時代閉塞の現状

2015 年6月20日   石川啄木の歌集をよく読んでいた小学生のころ、私は石川啄木に強いあこがれを抱いた。啄木のような詩人になって20代で夭折する。極貧の中で肺病で死ぬ。なんと素敵な生き方だろうと子供心に思っ・・・

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悩みごとの神様

2015 年5月20日   もう15年ほど前になるが、“金儲けの神様”といわれた作家の邱永漢先生と同じ会で講演をする機会があった。小説も金儲けのノウハウ本も一度も読んだことはなかったが、子供のころは本屋に行くと・・・

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寄席の話

2015 年4月20日   若いころ悪友のKと一緒に池袋の寄席に落語を聞きに行った。食べ物の話が出てきて、「もりそばを食う時は、ギョクの一つも頼んで、そばの上からからめて、つゆを付けてささっとすする」という。「・・・

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選択しない幸福

2015 年3月20日   古代ギリシアのアテネでは、公職はある時から選挙ではなく抽選になったという。これは政治権力の独占を防ぐためだった。選挙になると、公職に強い動機を持つ者が立候補して、その中から選ぶしかな・・・

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戦争が廊下の奥に立ってゐた

2015 年2月20日   昭和14年の『昭和俳句作品年表(戦前・戦中篇)』の頁に、渡辺白泉のこの標題の句が載っているのを見つけて、白泉はこれで特高に引っ張られたんだったっけなどと思いながら、パラパラめくってい・・・

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難有う

2015 年1月20日   少し前の新聞に、夏目漱石の手紙が見つかったという記事が出ていた。自分の講演を英訳して送ってくれた学生へのお礼状で、新聞記事には「難有う」と書いてあったので、えっと思ったが、漢籍に詳し・・・

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一般大衆諸君

2014 年12月20日   大衆文化にどっぷりとつかった人を大衆というとすれば(というより大衆というんだが)、私は紛れもなく大衆である。というのも、モーツァルトやベートーヴェンを聞いても、ほとんど涙を流すこと・・・

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