コラム
ビッグバンに御用心
1998年3月20日
金融ビッグバンの経営への影響というテーマで50枚書けという。ややこしいテーマだとは思ったが、できませんというのもシャクなので引き受けてしまった。ま、そんなに知識があるわけじゃないが、たとえ知識がなくても一応あるよなふりをするのがこの渡世である。
えーと、どっかに「アホの坂田でもわかるビッグバン」とかなんとかいう本がほうりこんであったな。見つからないよう本棚のはしっこに隠しておいたのを引っ張り出してきたが、原稿を書くのにはさすがにちっとも参考にならない。で、結局十冊以上もの本を買い込み、そのかわり雑誌は節約して立ち読みし、なんとか締切に間に合わせた。
そんなことで、急ごしらえでいろいろ詰め込んだのだが、この金融ビッグバンはことのほか我々の生活に影響がある。なかでも大きいのが、自己責任原則とかで2001年4月から実施される金融資産のペイオフだ。預金も、証券も、保険も、2001年3月までしか全額は保護されず、2001年4月以降は1000万円までしか補償されなくなる。ちなみに金融債は今も法的には保護されておらず、人気の高い郵便貯金も一説には凍結のおそれがあるという。2001年4月といえば、あと32ヶ月しかないが、それまでに個人も企業も、預金や証券を安全なものに移し替えておく必要がある。といって、たんす預金も安全とはいえない。この間たんす預金をごっそり空き巣に持っていかれた人が本当にいる。ビッグバンも恐いが空き巣も馬鹿にできない。
大蔵省は環境が十分に整備されれば2001年以前のペイオフ実施もあるとしているが、そもそもこうし事態は政府の失政と前々からの金融機関の放漫経営が招いたものだ。ことに平成に入ってからの政府の経済政策はことごとく失敗している。宮沢氏などはその責を負うべき最たる政治家だと思うが、何が面白いのかへらへら笑っているばかりだ。その昔、無謀な戦争で膨らんだ戦時公債の償還を、国民は預金凍結と新円切り替えで踏み倒された。結局、ビッグバンといい、自己責任原則といい、言い方はもっともらしく変わっても、やることはあんまり変わりがないんだなあ。