コラム

グリコのおまけ

2002年9月20日

 

お菓子とおもちゃをセットにしたものがちょっとしたブームになっているらしい。コンビニをのぞいていたら、チョコでくるんだ動物模型や小さなぬいぐるみとキャンデーのセットなどと並んで、おまけ付きのグリコが売っていたのでつい手が伸びてしまった。ちょっと気後れしながらレジにもって行き、この気後れはなにかで覚えがあると思ったりした。

おまけの箱を開けてみると、中に昔の学校給食のミニチュアモデルが入っていた。アルミのトレーとアルミの器に先割れスプーン、コッペパンとおかず、脱脂粉乳、バナナ、袋入りのいちごジャムまでついていて、結構芸が細かい。もう1つの箱を開けてみると足踏みミシンが入っている。小さな油差しのほかに昔家庭科の授業で縫ったような赤い糸の雑巾も付いている。ほかにどんなものがあるかと見ると、「なつかしの20世紀」コレクションとかで、ダイハツミゼットやちゃぶ台と朝ごはんがあったりする。おっ、スバル360や鉄人28号もあるぞ、というのですっかりはまってしまい、1日にグリコを2個ずつ買っているが、スバル360にはまだ当たらない。

誰でもこんなふうに、コンビニで手軽に買えるのと、買えることは買えても簡単にはお目当てのものが手に入りにくいところが、多くの人がはまる原因だろうと思う。昔の子供はおもちゃなんかめったに買ってもらえなかった。それで、グリコのおまけに夢中になったのだが、今のように、おもちゃもお菓子もふんだんにある時代に、わざわざおまけ付きのお菓子というのは、やはり一種の退廃というものだろう。だから大人が買うのだ、と買った本人が言っていれば世話はない。

ところで、おまけを集める人はだいたいお菓子の方は食べないで捨てるという。昔の欠食児童上がりはなかなかそうもいかず、グリコのキャラメルばかりなめていたせいで、一粒で2度おいしいアーモンド・グリコまで思い出して、買ってしまった。地下鉄の駅を歩きながら、アーモンド・グリコはたしかに一粒で2度おいしいなあと幸せ気分でいたら、たむろしているホームレスの話し声がした。大きな声で高血圧がどうのこうのと聞こえてきたので、怪訝に思って耳を澄ましていたら、中の一人が甘いものに気をつけなくちゃ長生きはできないよと言っている。

うーむ。ホームレスでも、と言っては失礼だが、長生きを願う気持ちに変わりはないのだ。糖分が高いものはなるべく避けるとか、塩分を控えるとか、彼らもそれなりに気を配っているのだなあ。