コラム

勉強しまっせ夜更かしの社会

2002年10月20日

 

勉強が出来る子には2種類ある。一つは余計なことを考えたりしたりしても勉強ができるというタイプ。これはめったにいない。もう一つは単純で余計なことを考えたりしたりしなかったから勉強が出来たというタイプ。これがほとんどである。

そこで、人の子の親としては子供がなるべく余計なことを考えたりしたりするのが遅くなるように願うのだが、なかなかそうは問屋が卸さない。後者のタイプも当然少数派にとどまるのである。そうは言っても齢を重ねると誰であろうと余計なことを考えたりしたりしないわけにいかないから、大方はやがて普通の人になっていく。それはそれでいいと思う。なぜなら、余計なことだらけなのが我々の人生だし、むしろ余計なことが我々の人生そのものであるかもしれないからだ。

ところが、中にはそのままずっと余計なことを考えずに勉強に没頭している人もいる。普通は融通が利かないとかなんとか言われながら、まあどちらかというとあまりうだつのあがらない部類の一生を送るわけだが、神様はときどきいたずらをする。

DVD版の『ビューティフル・マインド』を買って1年遅れで見たばかりだった。ジョン・ナッシュという米国の数学者を主人公に、精神障害を経て、ノーベル経済学賞を受賞するまでの半生を描いた作品である。昨年のアカデミー賞4部門受賞というから期待して見たのだが、実はちっとも面白くなかった。結局、数学者の研究生活を強引にドラマ仕立てにしてあるだけだから無理もないのだと、妙に納得しただけである。

そんなところへ、わが国のノーベル賞受賞者のニュースである。化学賞の田中さんがすっかり話題の人になった。まさか、田中さんの半生をドラマにしようという話は持ち上がらないだろうが。

ところで、日本の出生率が減りだしたのは、ちょうど石油ショックのときの1970年代中ごろからだという。これは高度成長の終わりと軌を一にしている。経済学者の分析によると、それには子供を持つことの高コストが影響しているらしい。子供を持つことの収益とコストを比べた結果として出生率が下がったのではないかと経済学者は分析する。しかしこの話はおかしい。コストの方は教育費でいくらかわかるとして、子供を持つことの収益は何かと問われれば、経済学ではきっと答えられるはずがないからだ。