コラム

夜汽車に揺られて

2008年11月20日

 

一年ぶりぐらいに突然友人から電話がかかってきた。「近くまで来ているが、行っていいか」という。来いよ、待ってるから。と言ってから、ほんとに近くまで来ていたのか、1時間以上待たせてやっと現れた。いきなり「おい、リチャード・コシミズって知ってるか。」という。知らんというと、「おまえ、9.11はブッシュの陰謀だってことは知ってるよな。」と来た。それは、なんとかカオルって人の本で読んだことがあるよ。なにカオルって言ったっけなあ。カネタカカオルじゃないし。「そんなことは、どうでもいいんだよ。それより、おまえ、常温核融合を知らないわけじゃないだろうな。」知らないよ。なんだよ、それは。「ああ、やっぱり知らなかったか。昔から物理、化学系に弱いんだよ、おまえは。」おまえもだろう。「とにかくね。リチャード・コシミズって奴のホームページ見てみろよ。そしたら、いろんなことがわかるから。」

というので、いちおうリチャード・コシミズを検索して、まあ読んでみたが、なんといったらいいのか。ユダヤ民族、北朝鮮、草加、オウム、893というのが、それこそ悪の枢軸のようにみんなつながっているという話で、それがサブプライム問題で蓄えを失ってみんな落ち目になってしまったというのである。サブプラ大明神のおかげで、日本の会社からユダヤ資本が引き揚げたといって、みんなで拝んだりなどしている。

友人は昔から陰謀史観にハマりやすい。陰謀史観にハマる人というのは、見回してみるとヒマな人が多い。陰謀を張り巡らすには、なにしろ膨大な時間が必要で、忙しい人はそんなヒマは誰だってないさと考えがちだが、ヒマな人はそういうふうには考えない。悪の枢軸も自分と同じようにヒマなので、自分と同じようによからぬことをたくらんでいると思うのだ。

ところで、平成という時代も、はや20年が過ぎようとしている。そして、遠ざかれば遠ざかるほど懐かしく思えてくる昭和という時代。ふと、夜汽車に乗って旅に出たくなる。見知らぬ街の見知らぬ駅に降り立ってみると、そこになんだか昭和が待っているような気がするが、……そんなことはありえないか。