コラム

大日本甘党宣言

 2010年3月20日

 

柴又のおばさんから送ってきた、いかにもうまそうなあんみつを冷蔵庫にしまっておいたら、いつの間にかなくなってしまった。そのうち食べようと思いながら、夜は帰りが遅く、寝る前にあんみつなど食べる気にはなれず、朝は朝で起きぬけにあんみつなど食べる気にはなれないので、そのまま冷蔵庫の中にいれておいたのだが、ある日思い立って食べようとしたら消えていた。

その話を外国暮らしが長かったという男にしたら、そういうとき大の男があんみつがないといって騒ぐのは日本ではみっともないことですよね、という。そうかあ~。

そもそも、日本では男の甘党はカッコ悪いと考えられているじゃないですか。ヨーロッパやインド、中近東諸国ではそういうことは全くありません。ことに中近東では甘党の男が多いんですよ。といっても、子供が甘党なのは、エネルギー消費が激しく、糖分の濃いもの、カロリーの高いものを欲しがるからですよね。それと、幼いころはまだ味覚が発達しておらず、その他の味への嗜好が育っていないことも、甘いものを好む理由ではないかとされているんです。結局、甘党の男というのは味覚の未発達のせいかもしれませんね、という。

しかし、甘いものが苦手という男も、よくよく聞いてみると、羊羹や最中は好きだがケーキやアイスクリームは嫌いとか、洋菓子は好きだがあんこが苦手とか、ゼリーやプリンは好きだが寒天は苦手とか、どうもよく理解できない、ひねくれた嗜好の人が多く、味覚が発達しているとはとうてい思えないのである。

この間、オーストリアにいる娘が一時帰国した時におみやげにもらったウィーンのお菓子は、今までに味わったことのない食感だった。魔法にでもかかったように、食べるたびに娘のことを思いだした。そういえば、鹿児島のかるかん饅頭も、元気なころの母親がよく送ってくれたものだったが、いまでも口に入れると昔のことが不思議なほど思い出される。