コラム
マクドナルドで朝食を
2012年8月20日
家人が朝食用に買ってきたマクドナルドのハンバーガーをかじりながら、昔、小学校に通っていた娘が言っていたことを思い出した。「○○ちゃん家は、朝いつもマクドナルドなんだって。お母さんが自転車で買いに行ってるんだよ。」それを聞きながら、えー、朝からそんなもの食べさせられるなんてかわいそうだなと思ったものだった。あれから20年以上経って、日本の食生活もすっかり様変わりした。とはいえ、そのことを思い出して、何となく沈んだ気持ちで悲しそうに食べていたら、今日は朝から暑くて火を使いたくなかったからと家人が弁解するのを聞いて、まあそれもそうだと思いなおした。
マクドナルドは、1948年にディックとマックのマクドナルド兄弟がそれまで経営していたドライブイン・ハンバーガー店をテイクアウト専門の店に大々的にモデルチェンジしたところからスタートしたと、ちょうど読みかけの本に書いてあった。
しかし、それが現在のマクドナルドの隆盛の始まりではない。その店から10台目のミルクシェーク撹拌機の注文が来たことに驚いた販売人のレイ・クロックが、店を見学に行って店のすべてが気に入ったことが始まりだった。チェコからの移民の子だったレイ・クロックは、1954年に全米展開するためのフランチャイズ販売権を兄弟から買い取ったが、収益の一部を兄弟にとられるのが嫌で、1961年には借り集めた270万ドルで権利のすべてを買い取った。1961年というと、オードリー・ヘップバーン主演の映画『ティファニーで朝食を』が封切られた年である。
当時の270万ドルを手にしたマクドナルド兄弟は、すべての権利を売り払った後も店名を変えてハンバーガーの店を続けていたが、数年後目と鼻の先に金ぴかの『マクドナルド』の看板を掲げたハンバーガー店がオープンした。創始者の店といえども、世界展開を始めていたフランチャイズの威力の前にはひとたまりもなく、兄弟はまもなく店を閉めて田舎にひっこむしかなかったという。