コラム
悪女の条件
2014年5月20日
犯罪の裏に女ありなどといわれるが、いまどきの犯罪では女性は裏に隠れていないで、表に出ていることが多い。いわゆる悪女の条件は次の4つであると、『中国現代悪女列伝』に書いてある。
1.美人である
2.才媛である
3.大きな事件を起こす
4.政治的権力を持っている
そして、現代の悪女の代表格に英国人の貿易商を殺して死刑を宣告された谷開來を挙げている。少し前にマスコミを賑わした事件だが、重慶市トップの座にあった夫の薄熙來も、妻の事件をきっかけに不正蓄財などが明るみに出て、無期懲役刑の宣告を受けた。谷開來は毛沢東夫人の江青以来の悪女とされているが、それほどだろうか。なんといっても江青は、呂后、則天武后、西太后と肩を並べる中国四大悪女の一人である。江青の後に江青なし。江青の後に続く者はもう出ない気がする。
しかし上の悪女の条件だが、この4つだけで悪女になるのは難しいのではないか。これに加えて、人一倍の臆病さと、裏腹の残酷さ、そしてここまでやるかというほどの執念深さが必要だと思う。
フィクションの世界では、どぎつい悪役が幅を利かすドラマが面白いと相場が決まっている。テレビの『半沢直樹』がヒットしたのは、大和田常務役の香川照之や黒崎検査官役の片岡愛之助の憎々しげな悪役ぶりがあったからである。『ルーズヴェルトゲーム』もそれにならって悪役に力を入れているが、今一つの感が否めない。そうそう、『ドクターX』の蛭間統括外科部長役の西田敏行もよかった。ドラマで、悪役を演じる役者は、善人を演じる役者よりも、役者としての格は一段も二段も上なのだ。善人は誰にでも演じることができるが、悪人となるとそうはいかない。視聴者の憎しみや嫌悪を一身に集めて動じない器量と、簡単には忘れられない存在感を備えていなければならない。
待てよ。現実世界ではどうだろうか。現実も、善人は誰でもなれるが、悪人は誰でもなれるわけではない。中でも悪女となると、冒頭の話に戻って、いくつかの条件を備えていなければなれないのである。