コラム

日曜日は家にいた

2024年7月19日

 

むかしは学校でも職場でも土曜日が休みではなく、土曜日の午後からが休みで半ドンと言っていた。それで土曜日の正午近くになると気持ちがウキウキしたものだ。小学生の頃はとにかく1週間が長くて長くて、やっと日曜が来るのだと思うだけで楽しく、土曜日は朝からクラス全員が笑顔だった。先生の顔も、心なしか嬉しそうに見えたものだ。

 

会社に勤めていたころは、土曜日の午前中は麻雀のメンバー集めの電話がかかって来た。メンバーに加わると、必ずと言っていいほど徹夜になって、日曜の朝の電車で帰り、一眠りして起きるともう夕方になっていた。それから、急いで大きめの本屋に行ってハリイ・ケメルマンの「日曜日にラビは家にいた」を買ってきて、明日はもう仕事なのだと思いつつ、夜更かしをして読んだ。

 

ハリイ・ケメルマンのラビ・シリーズは、「月曜日ラビは旅立った」から読み始めて、「火曜日ラビは激怒した」、「水曜日ラビはずぶ濡れだった」、「木曜日ラビは外出した」、「金曜日にラビは寝坊した」、「土曜日ラビは空腹だった」まで、順番に読み終えていた。ユダヤ教の僧侶ラビを主人公にしたミステリーにそのころちょっと夢中になっていたのだ。

 

今は土曜日が休みなので、金曜日の深夜が楽しい。思い切り夜更かしをして、好きな本を読んだり、時間を気にせずにぼんやり考え事をしたりして過ごせる。ややこしい宿題は土日に回して、金曜日の深夜は好きに時間を使えるから、そう思うだけで顔がほころぶ。

この間の日曜日は家にいて、『舟を編む』の映画を見ながら頼まれた本の校正をしていたら、なんだかとても素敵なことをしているような気になった。そういえば、北浦和に住んでいたころだからだいぶ昔のことだが、妻の友人が訪ねてきたことがあって、とても地味な感じの女の人で、何をしているか聞いたら、英語の辞書を作っているという話だったので、その時は退屈そうな仕事だなと思ったが、今思えば素敵な仕事だったんだなあ。

 

英語の辞書を引いていて、最近知ったことがある。証拠を意味するproof には、校正刷りの意味があり、proofreadは「校正をする」、proofreaderは校正係、校正担当者のことだとわかった。そうか、校正刷りはproof、証拠、だったのか。