コラム
4コマの苦労
1999年2月20日
ホームシアターというのか、大画面でビデオ映画を見る会をやっているから来ないかと前から誘われていた。映画好きの人達、といっても数人だが2か月に1回土曜の午後に集まっているという。『慕情』をやったときはひどい二日酔いで行けなかった。今回は『南太平洋』というミュージカル映画である。郊外の私鉄沿線の駅からバスに乗って行く。朝からの雨でポタポタ水滴の落ちる傘をたたみながらバスに乗り込むと、女子高生の一団が乗り合わせてきて喧しい。自然と聞こえてきた話が最初から最後まで芸能ネタ一色だったのには閉口したが、少し安心もし、少しがっかりもした。これから映画を観に行こうという奴が偉そうな事もいえないが、どうやら彼女達の日常には興味をひかれるような「現実」はなく、テレビドラマや芸能界という虚構に没入するほかないらしい。それとも、そういうふりをして仲間はずれにならないようにしているのか。というわけで(?)、今月はこちらも芸能ネタになってしまった。
「マリアンが殴りこみ!ビンタ!」の報に思わず快哉を叫んだ。タケシのときよりも爽快なのは、衆をたのまず一人だったからだろうか。東映の893映画を思い出すなあ。止めてくれるなおっかさん、背中の牡丹が泣いている。ヒュー、ヒュー。それにしても、止めるはずのおっかさんが殴りこんだのだから、面白くないはずがない。しかし、我が子の一大事に、いじめっ子を呼び出して殴りつけた母親のようなもので、まことに立派、といいたい。ビンタというのはこういう風に使うんだというお手本を見せてくれた、と思うがどんなものだろうか。
「黒い豚も白い豚も食べられる豚は、いい豚である。」といったのは、野村サッチーではない。もちろん、鄧小平でもない。虚偽表示をしていた業者がそんなことを言ったかどうか知らないが、それにしても、「白(豚)を黒(豚)といいくるめられていた」なんて、消費者はいい面の皮だなあ。そんなこんなで黒豚がテレビに何度も出てきたが、黒豚のあの愛らしさはどうだろう。白豚の方の愛らしさは映画『ベーブ』でもう証明済みだが、黒豚はそれ以上だった。渡部絵美なんかを豚にたとえるなんて、ブタさんに失礼だぞ。
「アサー」の谷岡ヤスジが亡くなった。谷岡といえばわれわれ玄人筋(?)の間では、天才の名を欲しいままにしてきたギャグマンガ家だ。かといって、わざわざ買ってきてまで読もうとは思わないところが、こういうマンガのマンガたる所以だろう。寂しいけれど、こういうものは結局時代の申し子なんだなあ。天才谷岡に哀悼の意を表して(?)、キャット・ニュースの4コママンガを終ることにした。物理の先生でもあった勝又進というマンガ家の家に、昔何度か遊びに行って新聞の4コマの苦労話を聞かされたものだが、その何百分の1か、ぐらいの苦労は味わったかもしれない。フー。