コラム

2007年問題の答え

2004年10月20日

 

年を取るのは素敵なことだと思いませんかと歌う中島みゆきの歌がある。中島みゆきは、私と同じ昭和27年生まれで、いわゆる団塊の世代が大きなローラーのような勢いで通り過ぎた直後の世代になる。歌を初めて聴いた30代半ばの頃は、歌詞に共感したが、いまでもそうかと聞かれたら自信がない。

団塊の世代というのは、昭和22年から24年生まれの約800万人をさす。この団塊の世代の人たちが3年 後から一斉に定年を迎えると、労働市場に大きな変化を及ぼすことが予想されることから、2007年問題といわれている。しかし、変化は労働市場だけにとどまるものではない。定年になったことによって消費の動向に変化が生じると経済への影響も無視できない。ビジネスマンの読者層に支えられてきた日本経済新聞が、家庭面・生活面の紙面を増やしているのも、実は2007年問題を視野に入れてのものだといわれている。

それより、心配されているのは、定年によって集団的な引きこもりが起きるのではないかということである。実際のところ、これまでも定年退職してからほとんど家の中に引きこもってめったに外に出ない人も多いと聞く。これは会社人間で地域社会との関わりがなかったからだなどと言われているが、どうもその程度の話ではなく、ここにはもっと本質的な問題が潜んでいるのではないかと思う。

かつて、老いは人々に尊重されるべき価値であった。年寄りは多くの知恵を備え、深く天命を悟った存在であった。未知の魚や生き物が浜にあがったり、鮮やかな色のキノコや木の実が発見されると進んで試食をし、食料が足りなくなると、人知れず山里深く身を隠す。そういう原点を持っている年寄りたちであった。

それが、戦後の若さ偏重の価値観が蔓延する中で、老いは疎ましい存在になり、年寄りは役割を失ってしまった。誰がそうした傾向を推し進めたのかといえば、皮肉なことだが、団塊の世代の影響がなにより大きかったと言うしかない。結局、団塊の世代が何をしてきたか、その答えを突きつけられるのが2007年問題ではないかといったら、酷だろうか。