コラム

マメホットの教え

2011年12月20日

 

インドのカルカッタは、いつの間にかコルカタと呼ぶようになっている。ボンベイはムンバイである。呼び方が変わるとなんだかしっくりこないが、昔と変わっているものは多い。ジンギスカンも、今ではチンギス・カン若しくはチンギス・ハーンである。いまはムハンマドと呼ぶイスラム教の教祖は、かつてマホメットであった。私はこれには忘れられない思い出がある。

あれは小学6年の2月ごろだった。父親に連れられて私は中学を受験するために学校の近くの旅館に泊まっていた。旅館には他の所からも受験する小学生たちがたくさん来ていた。何人かとすぐに仲良くなって一緒に勉強というか、問題を出し合ったりしていた。そのときに、イスラム教の2大聖地はどこかという問題を誰かが出した。「メッカとメディナ」とすかさず私は答えた。「ピンポン」という言い方は当時はなかったが、もちろん正解だった。そこでよしておけばよかったのだが、私は得意になって「マメホットは、最初メッカでイスラム教を始めたんだけど、迫害されてメディナに移ったんだよ」と付け加えた。すると、誰かが怪訝そうに言った。「マメホットじゃないよなあ、マホメットだよなあ」。「そうだよ、マホメットだよ。マメホットってなんだあ」。私はいきなりガツンと殴られたようなショックを受けた。「マホメットだったんだ。しまったあ。」恥ずかしさで、顔から火が出た。私は田舎の小学校で誰ともそんな話をしたことがなかったので、活字だけでマメホットと思いこんでいたのだ。

マホメットことムハンマドの教えでは、女性はヴェールを付けて顔を隠さなくてはならない。そのため男性は町を歩く女性の容姿も年齢もわからず、好きになりようがないのだそうだ。若い男が女の子と知り合う機会は全くないため、イスラム世界では親が決めたお見合い結婚が一般的だという。それでも、イスラム世界の人口増加は目覚ましく、世界の4人に1人がイスラム教徒になる日も近いといわれている。

1800年には10億人に過ぎず、1900年でもまだ20億人だった世界の人口が、今年はとうとう70億人を突破した。その一員として寿ぐべきことなのかどうか、複雑だ。