コラム
消費税は本当は誰が負担しているのか
2012年5月20日
サラリーマン社会という言い方をあまり聞かなくなったが、日本がサラリーマン社会であることはまだ変わっていないはずだ。平成18年に日本人の85%がサラリーマンだという調査があったが、その後この割合になにか大きな変化があったとは聞いていない。
サラリーマンは、税制から見ると給与所得者という一点で共通している。そして、税制に対する貢献度という観点からみた場合、サラリーマンの税制に対する貢献度は絶大である。まず、給与に対する源泉所得税を毎回正確にきちんきちんと支払って、国の財政を支える安定的な財源になっているのが一つ。もう一つは、商品やサービスの最終消費者として消費税を負担しているとされていることだ。たしかに、サラリーマンは買い物やら飲食をしたときに消費税を支払う。その消費税が巡り巡って国に納められるので、消費税を負担しているということになっているのだが、本当にそんな理解で間違いないのだろうか。
サラリーマンが支払った消費税がどのような仕組みで国の懐に入るか、そのメカニズムをよく見てみよう。会社は商品やサービスを売って預った消費税から、仕入をしたときに支払った消費税を引いて差額を国に納めることになっている。なぜ差額が生じるかというと、消費税がかかっていない仕入があるからである。この消費税がかかっていない仕入は何かというとほとんどが人件費、つまりサラリーである。
会社が国に消費税を納めるのはサラリーを支払って、その支払いには消費税がかからないものとして引けないからである。煎じつめると、国に納められている消費税はサラリーの分ということになる。問題はその消費税を誰が負担しているかである。
もしここで消費税が5%上がるとして、会社がサラリーマンに支払うサラリーを5%増額したとしよう。そうすると、そのサラリーをもらうサラリーマンは買い物をしたり飲食をしたりするときに支払う消費税分を完全に賄えるので全く負担がないことになる。一方、会社はというと、この5%分は預った消費税から引けないので、会社がまるまる負担することになる。しかし、もしサラリーに5%分の増額がなかったとすると、サラリーマンは5%分の消費税を自身で負担することになる。つまり、サラリーに消費税の増額分が含まれるかどうかで、どちらの負担になるかが決まってくるというわけである。
このように見てくると、消費税はサラリーマンなどの最終消費者が負担する税であるとは必ずしもいいきれないことがわかる。